部門別選択
三德は創業1949 年、東京都を中心に千葉県、神奈川県にスーパーマーケットを計33 店舗展開。創業以来「健康・安全・安心、美味」を追求しつづけています。商品づくりでは、素材の美味しさを活かし、健康で美味しく、環境にやさしい商品を提供することを心がけています。
スーパーマーケット各社において惣菜が強化される中、「どうしたら美味しいオリジナルのお惣菜ができるか?」を常に考えて商品開発に取り組んでいます。
今回受賞した「玄界灘産茎わかめと健農鶏とり天」は、当社精肉売場で推奨している当社ブランド鶏「健農鶏」と塩干・加工食品で販売している「玄海わかめ」、当社オリジナルの「白だし」を使用したとり天です。「健農鶏」は、岡山県の契約農場で、木酢液を配合した飼料を与え、環境にもこだわって育てられた、やわらかくきめ細やかな肉質でコクがある鶏肉です。当社ではこの「健農鶏」を使用した唐揚げやとり天も人気商品となっています。「健農鶏」はむね肉を使用し、焼津産かつお節一番だしと北海道産昆布、本醸造薄口醤油を使用した当社オリジナル「白だし」に漬け込み、一晩寝かせます。この白だしに漬け込むことによって、さらに肉の旨味が引き出されます。ここに玄界灘の荒波で育ち、漁師さんが手摘みしている肉厚の天然のわかめ「玄海わかめ」を合わせます。「玄海わかめ」は茎の部分を使用しました。コリコリとした歯ごたえが特徴で、食感とわかめの旨味が合わさった新しいとり天を作り上げることが出来ました。商品開発で難しかったのは、わかめととり天の「塩味のバランス」と「揚げ方」です。塩蔵の茎わかめを事前に塩抜きします。わかめの塩味が強すぎるととり天のだしの味を邪魔してしまいます。食感も悪くない程度に1 晩塩抜きするようにしました。またわかめのカットサイズもわかめの食感ととり天のバランスを考慮し、大きすぎず、小さすぎない様な大きさに変更しました。
天ぷらを揚げる工程では、鶏肉にわかめを“ まとわせること” に苦労しました。通常の天ぷらバッター液ですとわかめが鶏肉から剝がれてしまいますが、衣が濃すぎると素材の美味しさを半減してしまいます。天ぷらのサク味を損なわないように、天ぷらバッター液の調整を何度も行いました。
お客様からは、「茎わかめのコリコリとした食感がいい」「鶏肉のうま味が増して美味しい」など好評価でした。
デリカ単部門では中々特徴のある商品を生み出せませんが、今回、他部門の商品を使用した商品を開発し、お客様から好評価をいただきました。部門を超えて視野を広げることで、特徴ある商品をさらに作り出せると確信しました。今後も部門を超えた融合で、お客様に喜んでいただける商品を開発してまいります。
玄界灘産茎わかめと健農鶏とり天
株式会社三德
デリカ部バイヤー
須﨑 幸夫
山形県の鼠ヶ関(ねずがせき)港は日本で一番小さな漁港ですが、そこで水揚げされる海産品は大変品質が良く、特に甘海老と鯛は特産品となっています。それらの海産品を活かした商品を作り、食べた方が幸せになり、地元の名物商品になるとよいと考えています。
今回、甘海老の全てを捨てずに使い切り、海老の特長を最大限に活かした濃厚な味の“ ザ・甘海老天” と言えるような商品。かつ、ある程度時間が経ってもカリカリ・サクサク食感がある商品を作ることを目標としました。
甘海老は、山形県庄内浜で獲れた新鮮な生の甘海老の殻を一尾一尾丁寧にむきます。その甘海老を酒煎り塩をして半生状態にし、プリプリ食感が出るように下処理を施します。次に芯になるブラックタイガーに切り目を入れて伸ばし、そこに極寒の時期に獲れ身の引き締まった脂のりの良い極上の山形県産寒鱈(真鱈)と甘海老のすり身を塗ります。タラのすり身には、油分を補い味に深みを持たせるため、少量の卵と油、そして冷めてからも固くならないように石臼挽きの浮き粉をあわせてあります。そして、このすり身の表面に甘海老をくっつけていきます。甘海老は「海老千本」1本に対し贅沢に12尾を使用しています。
このタラと甘海老のすり身の分量が多ければ、甘海老はくっつきやすいのですが、すり身の味が強くなりすぎ、甘海老の風味と食感が損なわれてしまうため、すり身の丁度良い分量を見つけるために何度も作り直しました。また、このタラと甘海老のすり身には、甘海老の殻や頭のみそを長時間ローストした粉末も混ぜ込み、甘海老感を一層高めました。なお、甘海老粉末は、少し苦い部分も入れることで深みを増し、良いアクセントとなります。その他、日本海産藻塩も味付けに使用しています。
衣に使用した餃子の皮は、厚さにこだわり何種類もの皮を取り寄せ、切る太さを試行錯誤しました。最終的に0.2 ミリに切ることで、揚げた時に固すぎずサクサクの食感になります。針のような細さに仕上がることでインパクトも抜群です。
はじめは見た目のインパクトに惹かれますが、食べると、口の中に甘海老の食感と甘みや旨みが広がり、甘海老を丸ごと楽しめます。
今後のチャレンジとしては、山形県は美味しいフルーツが豊富にとれ、さくらんぼをはじめ、ラ・フランスやぶどう、スイカ、柿など、全国トップクラスの収穫量を誇る「フルーツ王国」でもあります。フルーツに衣をつけて揚げることで、さらに甘みが増し、サクサク食感がプラスされることで新たな商品が生まれるのではと考えています。
海老千本
山形優味株式会社
代表取締役社長
丸山 環
彩裕フーズは、米飯をはじめ、寿司やサラダ、和惣菜、サンドイッチ、麺類、スイーツ等、多岐にわたる商品を製造しており、他社にないもの、同社にしかできないものを原料から作ることをモットーとしています。
「三陸産茎ワカメと鮭の炊き込みご飯弁当」は、期間限定の三陸産茎ワカメの原料を使用し、季節感を全面に出した炊き込みご飯弁当です。
マミーグループでは、「より良いものをより安く」を企業理念としています。近年、物価高が進む中、米飯類も他の商品同様値上げをする企業が多くあります。当社も同様に値上げをした商品もありますが、398円という買いやすい価格で、いかにお客様に喜んでもらえるか、またファンを増やせるかということも大事なことだと考えています。なお、398円の弁当は、当社では最も安いクラスの弁当であり、今回、398円でもお客様にしっかりと評価していただける商品をつくるというチャレンジでもありました。
ご飯は、はえぬきをメインにしたブレンド米を使用し、藻塩や白麹清酒、だし、醤油等で味付けをしています。一緒に炊く鮭は、アトランティックサーモンの血合い部分を昆布抽出液と白麹清酒で下処理してから使用しています。鮭の血合いは通常捨てられることが多いですが、下処理をしっかりと施すことで、美味しい食材に変わります。近年は「フードロス対策」と言われますが、日本では昔から「もったいない」の精神や関西地方の「始末の料理」などとも言われ、「食べられるものを捨てない」「最後まで使い切る」ということを実践してきました。当社においてもフードロス対策として、製造時に出る原料の工夫やメーカーさんとの取り組みにより、美味しい商品が開発されています。
三陸産茎ワカメは炊き上がったご飯に、ほぐした鮭と一緒に混ぜ込みます。炊き上がり後に混ぜ込むことで、コリコリ食感と磯の風味を残せます。また、茎ワカメは塩蔵原料のため、塩抜きをしなくてはなりません。塩抜きする時間により、茎ワカメの食感や風味が変化するため、磯の香りと食感、塩味、うま味が丁度よく残る時間を探すのに苦労しました。
発売シーズンは2 月であることから、副菜には「菜の花のお浸し」や「筍の煮物」、「ひじき煮」などを添え、弁当全体として春を訴求しています。お客様からの反応はかなり良く、「他の店では398 円でこんなに美味しい弁当は買えない」と、嬉しい声が多くありました。
現在、当社では工場のリニューアル等により、新しい厨房機器が導入されています。今後は、新しい厨房機器を使用し、チャーシューをはじめとした肉惣菜など、新たなカテゴリーにも挑戦したいです。
三陸産茎ワカメと鮭の炊き込みご飯弁当
彩裕フーズ株式会社
商品開発室 バイヤー
山本 孝二
2004年に恵比寿にオープンした日本料理 賛否両論は、予約の取れない人気店として愛されています。「人を楽しませ、幸せにし、役に立った日本料理屋になる経営」を目指す当社は、敷居の高くない日本料理店として「腕・舌・遊び心」をモットーに独創的な感性で料理を作り上げています。
お弁当は、賛否両論の店舗コース料理のおいしいところを少しずつ詰め込んでおり、「これぞ賛否両論!」といえるお店の定番メニューから、お弁当ならではのおかずまで、最後まで楽しめる内容となっています。
「賛否両論 よそゆき手毬箱」は、2020 年コロナ禍で落ち込んだ景気と人々の気持ちを少しでも明るく楽しくしたいと始めたお弁当事業の商品です。お花見や卒業、謝恩会、入学など、ハレの日を華やか彩り溢れるものになるようにと願いを込めて開発しました。
ハレの日のお弁当ということで、まさに「よそゆき!」と非日常を体験していただける三段重となっています。色とりどりの手毬寿司は、生ハムやローストビーフ、スモークサーモン、煮穴子、椎茸など、肉・魚・野菜を使用した7種類。また、手毬寿司の上に添えられた薬味やたれで味の変化を楽しめる工夫もしてあります。
副菜には、直営店でも人気の鶏つくねやおかき揚げ、いぶりがっこポテサラ、人参カステラなど、三段重計で24 の献立がところ狭しと並んでいます。鶏つくねは、すりおろした玉ねぎを加えて柔らかくジューシーに仕上げ、いぶりがっこポテサラは、マスカルポーネチーズを合わせることでコク深く、いぶりがっこが心地よいアクセントとなり人気の献立となっています。
どの献立も冷凍品を一切使用せず、可能な限り国産の素材を使用し、素材本来の風味を活かした味付けをしています。また、食べやすいように全て一口サイズにしてあります。
当商品は、受注生産となっており、当日製造・当日配送で、鮮度を保ったまま召し上がっていただけるように心がけています。現在、10センチ四方の弁当箱で、のり弁や鮭弁、とり弁、野菜ちらしなどの弁当も開発中です。10センチ四方の弁当箱ですが、1つでもお腹も心も満たされる弁当にしたいです。
日本料理は、ご飯を中心に季節のものや時には祭事・行事などを表し、箸で食べるという、どこか日本人の心や佇まいそのものでもあります。そして弁当は、箱に詰めることで表情を変え、そこにロマンが生まれると考えています。
これからも日本料理の良さをリーズナブルな弁当で表現し、食べる方を楽しく幸せにしていきたいです。
よそゆき手毬箱
株式会社賛否両論
日本料理 賛否両論 店主
笠原 将弘
サミットは1963年に創業。首都圏1都3県でスーパーマーケットチェーン「サミットストア」を計123店舗展開しています。
当社では、総菜部門だけではなく、生鮮部門においても店内で販売している生鮮素材を中心に使用し、店内加工で即食商品(生鮮デリカ)を提供しています。この取り組みは、お客様に同じ素材で製造した生鮮デリカを召し上がっていただき、サミットで販売する素材の品質や美味しさを知っていただくための取り組みです。
青果部門においては、販売当日に製造・販売することを基本とし、店内製造でしか提供できない新鮮なサラダやカットフルーツに加え、焼き野菜、フルーツを使用したスイーツなども提供しています。材料には、売場で販売する季節の野菜や果実だけではなく、日配品や鮮魚・精肉商品など幅広く検討し、フレッシュで美味しい商品の開発を心掛けています。
「すだち香る!5種のお出汁きのことれんこん」は、「秋がイメージできる『きのこ』を存分に味わえる商品」をテーマに開発しました。商品には、舞茸や椎茸、ぶなしめじ、エリンギ、ブラウンマッシュルームの5種類のきのこのほか、れんこん、大根おろし、すだちを使用しており、全て青果部門で販売している商品です。
だし調味液は、焼津産鰹節等を使用した出汁を使用しており、素材の風味を活かす味わいとなっています。
5種類のきのこは、170℃・1分の素揚げをすることで、だし調味液が短時間で染み込みやすくなると共に、油のコクと合わさりさらに旨みを感じられます。それぞれのきのこの味と食感が異なり楽しめると共に、出汁のうま味成分イノシン酸ときのこのうま味成分グアニル酸が合わさることで、さらに複雑で味わい深くなります。また、れんこんの食感は心地よいアクセントになります。
食べる時は、是非すだちを絞って食べていただきたいです。まるで日本料理の土瓶蒸しを連想させ、すだちの酸味と爽やかさで出汁まですべて飲みきれ、上質感と満足感を得られます。
店内加工サラダは生産効率の低い分類ですが、需要は堅調に高まっており、店舗での作業負担が増加しています。この作業負担を軽減するため、店舗従業員向けのサラダ製造研修回数を増やし、技術力の向上を図ると共に、従来の1 人体制から2人体制のオペレーションへの変更など、生産効率の改善にも取り組んでいます。
より多くのお客様へより良い商品を提供できるよう、今後も魅力ある商品の開発と生産能力の向上に努めて参ります。
すだち香る!5種のお出汁きのことれんこん
サミット 株式会社
青果部バイヤー
金森 健人
株式会社シニアライフクリエイトは、「宅配クック123」という高齢者向け宅配弁当を主に運営をしている企業です。また、離島である小豆島の活性化を目的に立ち上げた仕出し弁当やお弁当・お惣菜の店頭販売店「福み味(ふくみみ)」では、高齢者サロン「昭和浪漫倶楽部」や「宅配クック123」、キッチンカー「FUKUMIMI KITCHIN」の計4業態を運営しています。
「福み味」では、「ご自宅で作るお食事にはかなわずとも、その次に美味しいお食事の提供をしたい」という、“ 小豆島の台所” を目指しています。そのため、一般的な家庭で使用されているような素材や調味料を使用することを心がけています。また、提供商品については導入前に外部検査を実施することで品質管理に努めています。
今回、最優秀賞を受賞した「出し香る卵焼き」は、2020年の「福み味」オープン以来人気商品であった「出汁巻き玉子」をリニューアルした商品です。リニューアル前の商品も大変支持が高かったのですが、より美味しく、より家庭の味に近づけることを目的に、2023年7月にリニューアルしました。リニューアルにあたり設定したテーマは「シンプルに美味しく、飽きの来ない毎日食べたくなる卵焼き」です。
リニューアル前の商品は冷凍卵液を使用していましたが、卵本来の風味が損なわれ、家庭で作る卵焼きとは少し違うと感じていました。今回のリニューアルでは、店舗厨房で鶏卵を手作業で割卵し、しっかりとザルで濾すことで、舌触りの良い卵焼きになり、卵殻や異物混入防止にも役立ちます。
卵液に地元小豆島にある丸島醤油のかつおと昆布の合せ出汁とみりんを合わせます。丸島醤油のかつおだしは香りが良く、上品な味に仕上がるところが特長です。
食べたときのふわふわ・しっとりとした食感、そして適度な弾力が残るような配合にたどり着くまでには、何十回も試作を繰り返しました。
焼きには、あえて家庭で使用しているようなテフロン加工のフライパンを使用しています。また、使用する油は、冷めても油臭さが残らないように米油を使い、最後に「福み味」の焼き印を入れることで専門店のような高級感を出した自慢の商品をリーズナブルな価格で提供しています。
なお、冷凍卵液から割卵した生卵に変更しましたが、商品の芯温をしっかりと計り、安全に提供できるように心がけています。
リニューアル後は、5倍近く売れる月もあり、焼き待ちのお客様まで出るほどで、お客様からの支持が益々高まっています。
今後は、同じかつおだしを使用した鶏唐揚げにも挑戦したいです。
出し香る卵焼き
株式会社シニアライフクリエイト
宅配クックワン・ツゥ・スリー小豆島店
福み味小豆島店 店長
荻 晶子
彩裕フーズは、「マミーマート」や「生鮮市場TOP!」、「マミープラス」などを展開するマミーマートグループの惣菜商品や精肉商品の製造・販売を実施している企業です。
惣菜商品においては、米飯をはじめ、寿司やサラダ、和惣菜、サンドイッチ、麺類、スイーツ等、多岐にわたる商品を製造しており、他社にないもの、同社にしかできないものを原料から作ることをモットーとしています。また、原料から製造することで、利益の確保はもちろん、従業員の技術レベルの向上を図り、オリジナリティーのある商品を製造することができると考えています。
「島豆腐と沖縄県産もずくの塩ドレサラダ」は、健康を意識されるお客様に向け、体を作るために必要な栄養分のある食材を使用し、野菜や海藻がメインの食材であっても満腹・満足になれるサラダを目指しました。
近年のサラダブームにおいて、「1食で完結できる、満腹になる」「自然食材」「美味しい」などのキーワードから、沖縄食材が注目を浴びており、沖縄食材を使用したサラダの開発を決めました。
メイン食材は、沖縄の島豆腐と沖縄県産もずくです。これらの食材は、沖縄県をイメージする食材として広く認知されており、また、ヘルシーさに関しても抜群の好イメージ力を持っており、お客様に訴求しやすい食材と言えます。
島豆腐は一般的な豆腐より水分が少ない分凝縮されており、たんぱく質やミネラル分が豊富です。また、食べ応えがあり、満足感を得られます。この島豆腐にスチームをかけ、水分量を15%ほど落とします。これにより、より噛み応えがさらに増します。しかし、ヘルシーだからと言って、豆腐だけを食べるのは楽しくありません。そこで、ここに鹿児島県産かつお節と北海道産昆布からとった出汁を加えることで、口に入れた時に出汁がジュワッと染み出し、島豆腐のみでも美味しく食べられるようにしました。盛り付けの際は、他の具材と混ぜて食べやすくするため、粗目にクラッシュして盛り付けてあります。
メイン食材のもう一つである沖縄県産もずくは、通称“フトモズク”とも呼ばれ、コリコリとした歯ごたえと独特のヌメリが特徴です。低カロリーかつ栄養価が高いヘルシーフードとして、最近はもずく酢以外にも多用されています。しかし、もずくは茶褐色であり、サラダの彩りとしては足りません。そこで、もずくの他にわかめと赤かえでも加え、サラダ全体として“沖縄の海”を彷彿とさせています。
ドレッシングは、エキストラバージンオリーブオイルとレモン汁、出汁、塩とシンプルなドレッシングとし、各素材の風味を実感できるようにしました。
今後は、外食メニューを惣菜としてアレンジし、新たなカテゴリーの開発にも挑戦したいです。
島豆腐と沖縄県産もずくの塩ドレサラダ
彩裕フーズ株式会社
商品開発室 チーフバイヤー
斎藤 都史也
おかげさまで、今では「知らない」という方があまりいないほど、多くの方に愛されているピエトロドレッシング。しかし、ピエトロのはじまりはドレッシングメーカーではなく、1980年に福岡市・天神にオープンした一軒のスパゲティ専門店です。そこで提供していたドレッシングの美味しさが評判となり販売がスタート。現在はドレッシングやパスタソース、スープなどの製造販売やパスタ料理をメインとしたレストランおよびサラダパスタ/ライス専門店の「PIETRO MIOMIO(ピエトロ ミオミオ)」も展開しています。
当社で提供する商品は、美味しさはもちろん、お客様に喜んでいただくことを第一に考え、見た目の楽しさや新しさを追求できるようなメニュー開発を心掛けています。
今回受賞した「サラダチキンとフレッシュアボカドとソイスナック」は、サラダパスタ/ライス専門店「ミオミオ」のテイクアウト商品となります。
近年、サラダ需要が高まってきており、満足感のあるサラダをお店で提供するだけではなく、テイクアウト商品を用意することで、よりたくさんの方に野菜とこだわりのピエトロドレッシングを使用していただき、ピエトロファンになって欲しいと考えました。また、野菜だけではなく、タンパク質や炭水化物の食材をバランスよく合わせることで、美味しく、体に嬉しく、満足感を得られるサラダをコンセプトとしました。
ベースとなるグリーンリーフ80gの上に、はかた地鶏のサラダチキン、発芽大豆ミートのフリット、フレッシュのアボカド、キャロットラペ、ボイルドエッグ等をトッピングしました。
サラダチキンはレモンドレッシングで軽く下味をつけているためさっぱりと召し上がれます。大豆ミートは、素揚げをしてピエトロオリジナルシーズニングで味付けをしています。キャロットラペは、クランベリーやパパイヤ等のドライフルーツを合わせ、ドレッシングで和えました。各具材には下味を付けているので、そのまま食べても美味しくいただけますが、選べるドレッシングの「ピエトロドレッシング 和風しょうゆ」や「ピエトロドレッシング まろやかレモン」と混ぜることで、味変となりさらに楽しめます。
容器にもこだわり、一目で具材が分かる口が広いもの、おしゃれ感があるもの、SDGsを意識しプラ容器ではなくクラフト容器、という基準で採用しました。
サラダは、朝食やランチのイメージが強いですが、パスタやライスなどと上手く合わせることで、夜でも罪悪感なく、さらに満足いただけるサラダメニューとなります。「食事になるサラダ」を目指し今後も開発に取り組んでいきたいです。
サラダチキンとフレッシュアボカドとソイスナック
株式会社ピエトロ
R&D室
高倉 茉由
マミーマートは埼玉県を中心に東京都、千葉県、群馬県、栃木県でスーパーマーケットを展開しています。既存業態店舗『マミーマート』49店舗、ディスカウント業態『生鮮市場TOP』23店舗、新フォーマットのディスカウント業態『マミープラス』4店舗で構成されます。
私が所属するTOP!事業部では、「Always New ~いつでも新鮮があるところ~」をブランドテーマに掲げており、お客様が来店する度に「食材」・「情報」・「体験」の新たな「新鮮」を感じてもらうため、常に新しい発信を行っています。
当社の惣菜商品づくりの考え方としては、「自分の家族や子供にも安心して食べさせたくなるもの。美味しさ、お客様の驚き、そして楽しんでいただける食のファンタジスタとして商品づくりに取り組んでいます。
当社では、健康軸の商品開発を行う上で、女性をターゲットに開発を進めています。大盛やボリューム感のある商品に対し、女性でも気軽に買え、さらに“野菜どっさり”などの健康をイメージできるような商品の開発を心掛けました。
「ギルトフリーミートソースのスパゲッティ」は、「美味しく、楽しく、1日分の1/2の野菜が1食で摂取できる」をコンセプトに、「女性でも大盛を食べたい」という隠されたニーズを具現化。つまり、“罪悪感の払拭商品”とも言えます。
商品は、ナスやズッキーニ、パプリカ(赤・黄)、スナップえんどう、ブロッコリー、キャベツの7 種の蒸し焼き野菜に、自家製のセミドライトマトのマリネをトッピングし、彩りとボリューム感を出しました。さらに自家製のミートソースを使用することで、味わいよく、高いコスパも実現しました。
当商品では、乾麺をボイルしてからソースと和えるのではなく、乾麺に自家製ミートソースと水を加え、スチコンで蒸し焼きにしました。そうすることで、パスタの中にまでしっかりと味が入り、麺のうま味も全て味わうことができます。また、麺の伸び防止にも役立ちます。野菜も同様に蒸し焼きにする事で、風味を損なわず、パスタとの一体感が増します。さらに、自家製ドライトマトのマリネで味変もでき、飽きることなく大盛パスタをペロリと食べることができます。
乾麺のスチコン調理では、蒸し焼きにする時間と乾麺がちょうど吸いきる水分量の調整に苦労しました。一方、今回の経験により、スチコンを活用した新たなパスタ調理のスキルを得られたことは大きく、今後のパスタメニューの広がりが期待できます。さらに、スチコン乾麺調理では、茹でる+和える の工程を一度で行えるため、オペレーション面でも改善でき、生産性の向上につながっています。
今後の商品開発としては、これまでの価値観をひっくり返すような商品の提案をしてみたいです。
ギルトフリーミートソースのスパゲッティ
株式会社マミーマート
TOP!事業部 惣菜部 部長
服部 吉宏
ダイキョープラザは、福岡県を中心に地域密着型スーパーマーケット「ダイキョーバリュー」を展開しています。
当社の商品開発は、旬の食材を活かし、地元の食文化を反映した商品を提供することに注力しています。また、伝統的な味わいに革新的なアプローチを加えることで、新しい味の発見を目指しています。
毎年冬が近づくと、各スーパーの惣菜売場に「牡蠣フライ」が並びます。牡蠣フライはどこのスーパーでも人気商品で、冬の定番商品となりました。しかし、牡蠣商品は牡蠣フライ以外にはほとんど見かけません。これだけ国民に愛されている牡蠣なのに、他のメニューが出てこないのはもったいない。今回、「牡蠣の新たな魅力の発見」をテーマに、旬の牡蠣を活かした料理を通じて、牡蠣の持つ多様な味わいと価値を再評価することを目指しました。
「肉巻牡蠣の揚げ煮重」は、旬の牡蠣を生の大葉と国産豚で巻き、特製の甘辛タレで味付けした商品です。鉄板で焼いた豚バラ肉の香ばしさと牡蠣の旨みの相乗効果で、贅沢感と満足感を味わえる商品に仕上げました。
旬の新鮮な牡蠣に片栗粉をつけて素早く揚げ、旨みを閉じ込めたあと、甘辛ダレを鍋で沸騰させた中に入れてからめます。小麦粉をつけて揚げたことで、タレの味がしっかりと牡蠣に絡みます。この段階では、まだ牡蠣に十分な熱は入っていません。この段階で熱を入れすぎると、仕上がりで牡蠣が固くなってしまいます。その後、大葉と豚バラ肉で牡蠣を巻き、スチコンのコンビモードでふっくらと焼いてから、再び鉄板でタレをつけて香ばしく焼き上げます。途中、スチコンで焼くことで、しっかりと牡蠣に熱を入れ、安心してお客様に提供できます。この調理した牡蠣を10粒ご飯の上に並べ、大根おろしをかけました。仕上がりは「うな重」をイメージし、豪華さと満足感が出るように盛り付けました。
使用するタレは、九州の甘い醤油をベースにみりんや酒、昆布だしなどで作った特製ダレを使用しています。見た目以上にサラっとしており、芳醇な味わいですが、牡蠣の風味を引き立たせるタレに仕上げました。
難しかったところは、牡蠣と豚肉の分量です。どちらが多くても、どこかにある味となってしまいます。丁度良い分量で牡蠣を巻くことで、新感覚の商品となります。
土用の丑の日には、うな重+「肉巻牡蠣の揚煮重」商品を提供したところ、お客様から大きな反響をいただき、「毎週食べたい」などのコメントも多くいただきました。
当商品はまだまだ可能性があり、様々な形で提供できると考えています。お客様にさらに喜んでいただけるメニューを開発していきたいです。
肉巻牡蠣の揚煮重
株式会社ダイキョーバリュー
惣菜部 部長
梶原 正子
ヤマトは、1981年に創業し、漁港から魚を仕入れ行商することから始まりました。「南房総の高品質な魚介類をより多くのお客さまにお届けしたい」「美味しく魚を食べていただきたい」という想いから、地域密着の卸売事業をはじめ、小売事業、外食事業、観光事業を展開しています。
当社は卸売事業の強みを活かし小売事業(鮮魚店)や外食事業(回転すし、ラーメン店、居酒屋等)も展開しています。当社外食店舗で人気の商品を小売事業でも形を変え、「魚屋が本気で考えた海鮮丼」シリーズとして販売するためにチャレンジしました。
近年のサーモン人気の中、サーモン使用商品は様々な場所で数多く販売されています。「いくらたっぷりサーモン親子丼」では、そのような中でどのように味の違いや満足感を表現し差別化していくか、また、サーモンの良さを最大限に引き出し、お客様に知っていただくために開発を進めました。
「いくらたっぷりサーモン親子丼」は、どんぶりの表面をサーモンの刺身、サーモンのハラミ部分の炙り、そしてたっぷりのいくらを豪快に盛り付けた商品です。もちろん、当社の外食事業でも使用している自慢のサーモンとなります。
使用する生サーモンは、卸売事業を展開する当社の仕入れルートを活用して自社便で空輸したノルウェー産最上級サーモンで、鮮度や色目、脂のり、味わいは抜群です。そのサーモンの刺身を大判で厚めに切り出し、生サーモン1枚15g×3枚を使用。脂のりの良いハラミ炙りは、サーモンの甘みを引き出す醤油ベースの特製ダレを塗ってから炙り、15g×2枚を使用。イクラの醤油漬けはたっぷり60g を使用しました。
これらの贅沢なネタをのせる酢飯は、千葉県産「ふさこがね」を使用しています。「ふさこがね」は粒が大きく、もっちりとした粘り気があり、寿司ネタとの相性も良いです。そのシャリの上に刻み海苔とごまを散らし、各ネタを敷き詰めました。
盛り付けと容器の選定には意外に苦戦しました。外食ではどんぶりで提供しているため豪華さを演出しやすいですが、テイクアウト容器では同じようにはいきません。上質感や豪華さを演出するために、プラ容器ではなくファルカタ材容器を採用し、シャリは絶対に見えないようにし、ネタの配置や重ね方も試行錯誤しました。
価格は税込1,200円です。外食事業では、ほぼ同じ内容で税込約2,000円なので、かなりリーズナブルに提供しています。
今後は、特製ダレを使用したポキ丼など、少し洋風の食べ方での提案もしてみたいです。
いくらたっぷりサーモン親子丼
株式会社ヤマト
事業推進サポート本部 副本部長
プロダクト推進部 EC推進室
逆瀬 行仁
「はかた一番どりを味わう手作りつくねの焼きおにぎり」は、商品名の通り地元博多が誇るブランド鶏「はかた一番どり」の美味しさを全面に出したおにぎりです。「はかた一番どり」は、うま味成分であるイノシン酸が一般的な鶏肉よりも約15%多く、優れた食味とさっくりとした歯ごたえが特長のブランド鶏です。
はかた一番どりは、そのまま焼いて食べても味わい深く美味しいのですが、今回は、より手軽に、よりリーズナブルに楽しめるスーパー惣菜商品として開発しました。
今回のおにぎりは、一目でわかる通り、具材がつくねなのではなく、ご飯をつくねで包んだ商品です。つくねをご飯で包んだおにぎりも作りましたが、ごはんに旨みが移ることはなく、どこにでもあるおにぎりとなり面白みはありません。
メインで使用する部位はもも肉とむね肉です。もも肉は柔らかくジューシーで、熱を加えても固くなりづらいのが特長です。むね肉は熱を加え過ぎると固くなりやすいですが、うま味が強く、もも肉と比べて安価です。それぞれをバランスよく使用することで美味しさの相乗効果が生まれ、リーズナブルに提供できる商品に仕上げました。鶏つくねはその代表格と言えます。
一番苦労した点は、はかた一番どりのうま味を最大限に引き出すもも肉とむね肉の配合です。また、軟骨ミンチなど加えて食感が楽しめる工夫をしています。
この生ミンチでご飯玉を包んで焼くのですが、鶏肉だけで包むと、ご飯玉との間に隙間ができず、割れたりはがれたりしてしまいます。はかた一番どりの良さを活かした鶏肉の配合と、上手く形成でき、焼いた時にご飯玉としっかりと密着するためのつなぎを見つけ出すのには苦労しました。
結果的に、もも肉7:むね肉3の配合と、つなぎに卵白と山芋を使用することで、ふんわりと包んで焼き上げることができました。ご飯玉に密着することで、はかた一番どりの肉汁がご飯玉に移り、大葉・ごま・チーズと合わさることで、後を引くうま味となります。
なお、ミンチの鮮度を保つため、ミンチ製造の際には、ミンチ機との摩擦によりうま味が逃げてしまわないように、ミンチ後すぐに冷却しています。
おにぎりには見えない独特の形状をアピールするため、ドーム状のスイーツなどで使用する容器を採用しました。
今後も地元の素材力を活かし、美味しさはもちろん、お客様が笑顔になるような商品の開発をしていきたいです。
はかた一番どりを味わう手作りつくねの焼きおにぎり
株式会社ダイキョーバリュー
惣菜部 部長
梶原 正子
山形優味株式会社は山形県鶴岡市に本社を置き、懐石料理店「すず音」「銀のすず」を県内で展開している他、弁当・惣菜の製造・販売も実施している企業です。提供する献立や商品は“地産地消”を軸にしており、海産物に関しては、山形県で唯一全魚港から魚を直接仕入れることができ、最良の素材と最上の職人技で記憶に残るおもてなしを致します。
当社ではうま味調味料や食品添加物を一切使用せず、日本料理の原点である素材の味を活かした商品づくりをしています。また、商品自体の個性を最大限に活かし、素材の味+個性的な商品づくりをしています。
そして、“地産地消”というテーマでの商品づくりの中、「山形の素材を全国に広めたい!」という思いがありました。良い素材と素敵な原石、そして生産者との絆があり完成した商品です。
当商品は、こだわりの荒波手摘み岩のりおにぎりと極寒ふのりおにぎりのセットで、くせ(香り)とごはんの美味しさをコンセプトに開発しました。米は冷めても美味しい「つや姫」と粒が大きく食べ応えのある「雪若丸」のブレンド米で、どちらも山形県産です。米を炊く際には、かつおや昆布出汁を使用せず、地元の野菜スープと椎茸の軸から取った精進出汁を使用することで、主役の海苔の風味をより引き立たせることができます。
荒波手摘み岩のりおにぎりは、真冬の極寒荒波の中、岩についた少量の海苔を庄内の海女さんが手で摘み、天日干しにこだわった磯の香り満載のおにぎりです。岩のりをそのまま使用すると、固くご飯に付きづらいため、一度だし醤油に浸してから握ることでしっとりと握れ、磯の風味も増しました。
極寒ふのりおにぎりも、極寒期に収穫した一番食感の良いものを使用。ふのりは水ではなく、癖の少ない地元の醤油と自家製だしで戻すことで、軽く下味をつけ、食感だけではなく、ふのりをご飯とを一緒により味わえる工夫がしてあります。ふのりおにぎりは、特に握るのが難しく苦労しました。しかし、どちらのおにぎりも手握りすることで、ご飯によくなじみ、より美味しくなりました。
具材の鮭と付け合わせのいくらも山形県産で、いくらは海苔の味と調和するように少し薄味に仕上げてあります。また、大根の漬物の調味液も山形県産の原材料を使用しています。
今後も“地産地消”をテーマに、調味料に至るまで全て地元山形県産を使用した商品を提供したいです。山形は山の幸・海の幸の宝庫でもあり、食の原石をさらに発掘し、さらに美味しく磨き上げていきます。
磯の香り満載おにぎり
山形優味株式会社
代表取締役社長
丸山 環
ヤオマサは1919年(大正8年)、神奈川県小田原市に青果店として誕生。現在は神奈川県にスーパーマーケットを11店舗展開するほか、TSUTAYA2店舗、BOOK OFF2店舗を展開しています。創業以来「食文化を中心とした豊かな楽しい生活を提供する」という基本姿勢を貫き、地域密着型スーパーとして愛されてきました。
当社は小田原魚市場で買参権を保有しているメリットを最大限に活用し、朝獲れの超鮮度の魚介類を店舗に直送。丸魚からお造り、寿司等に変化させて、お客様に本当の魚の美味しさを伝えることを目指しています。
「5種のあじ食べ比べ寿司」のコンセプトはSDGsです。お肉も美味しいですが、海に囲まれた島国である日本だからこそ、豊富な海産資源に囲まれ、美味しい魚が食べられます。もっと日本近海でとれる魚を他のスーパーマーケットでも売ってもらいたい。そうすることで、その土地で生活している漁師さんの生活も豊かになり、食料自給率も上がると考えています。
一言で“鯵”といっても、皆さんが知っている真アジのほか、メアジやアオアジ、アカゼアジ、ヨロイアジ、イトヒキアジ、ギンガメアジ、ムロアジ、オアカアジ、カクアジ、シマアジ、モクアジ、ロウニンアジなど、聞いたこともないような鯵がたくさんあります。日本近海には約150 種類の鯵がおり、そのほとんどが食べられる鯵です。しかし、ほとんどは食べられていないのが現状です。
今回は、小田原で獲れる地魚の中で、5種類の鯵を握り寿司で提案しました。人間でも十人十色といわれますが、あじも同様で十鯵十色で、すべての鯵の味が違います。季節でとれる鯵も変わってきますが、5種類の鯵を握り寿司で食べていただくことで、魚の幅広さや奥深さを知って欲しいと思っています。
定置網でとれる地魚は、冷海水で氷締めされそのままセリにかけられます。その魚を市場の競りにて自ら買い付け、店舗で丸で販売した後に、造りや寿司で販売します。今日獲れた魚を今日加工するということは、一般のスーパーでは難易度が高いといえます。しかし、今日獲れた魚を食べると、最高に美味しいのです。この美味しさを、是非、お客様に知っていただきたい。
私は魚屋です。お客様に「ここのお魚が食べたいからこの店に来た」と仰っていただけることが何よりも嬉しいです。今後もそのようなファンを増やしていきたいです。
5種のあじ食べ比べ寿司
ヤオマサ株式会社
営業本部 SM商品部
鮮魚バイヤー
内藤 淳一朗
ひまわり食品では、チルド惣菜をはじめ、寿司・弁当・おにぎり・おこわ等の米飯類、最新技術でできたてを凍結した冷凍食品等を製造しています。商品開発にあたっては、市場調査をしっかりと実施し、ニーズを研究しています。その中で、全国規模のコンクールにも積極的に当社商品を出品し、見栄えや美味しさ、値ごろ感など、世の中のトレンドとすり合わせることで、日々商品を磨き上げています。
「絹衣巻と豪華手毬寿司」は、週末やハレの日、お祝い、自分へのご褒美など、良き日に、自分もまわりの方々も笑顔で幸せになれる上質いなりと手毬寿司のセットです。当社では、絹衣巻を約1年半前から週末・祝日を中心に単品で販売しており、お客様から大変好評となっていました。今回、その絹衣巻を見た目も味もグレードアップさせ主役級に昇格させ、さらに手間を加えてご褒美感を演出しました。
絹衣巻に使用する揚げは、通常のいなり寿司の袋状いなり揚げとは異なり、シート状のいなり揚げとなっています。一枚一枚手揚げされ、ふっくらきめの細かい厚手のいなり揚げです。きめが細かく舌触りもよく、厚手で出汁を吸いとてもジューシーに仕上がります。
主役の絹衣巻と合わせる食材は、絹衣巻の食感とジューシーさを損なわず、個性が強くない味付けとしました。鯛やサーモン、海老、穴子、玉子、わさびなど、いくつもの食材で何度も試作を繰り返しました。また、絹衣巻も手毬寿司も、私自身がこれまで開発してきた商品の集大成と言えるくらい、大変手の込んだ献立となっています。特に絹衣巻は、揚げに切り目を入れ、蒸し海老と穴子を差し込んで炙っており、絹衣巻自体が着物の帯を巻いているかのように設計しました。
製造では、前日に各献立の仕込みを行い、当日は短時間で製造が完了するようにしています。当日の製造はもちろん手作業となり、担当する献立をスタッフが一人で仕上げます。流れ作業ではなく、各々が各献立を最後まで責任をもって仕上げることで、技術力や美的センスの向上、製造時間管理力の強化にもつながっています。
「これだけ手を掛けて、売れなかったらどうしよう」という心配もありましたが、お客様から「今回はこれまで以上に手が込んでいて、美味しかった」と、多くのお褒めの言葉をいただき、手間を掛けた分、お客様は応えてくれると実感しました。
現在開発している商品は巻物です。私は“日本の巻物を面白くしたい”と考えています。また、田舎巻きなどの普段愛されている巻物をご馳走にして提案してみたいです。
絹衣巻と豪華手毬寿司
株式会社ひまわり食品
味燦舞 新潟伊勢丹店 店長
吉田 美砂子
道南ラルズは、北海道北斗市に本社を置き、函館市を中心とした北海道道南エリアで18店舗を展開する地域密着型スーパーです。また、2024年3月には20周年を迎えます。
当社の商品づくりでは、スローガンである「明るく・元気に・前向きに」を取り入れて、お客様が楽しくなるような商品づくりを目指しています。
当社ベーカリーのピザ商品は10インチピザを中心に販売しておりましたが、世界情勢の不安定や円安の影響により、ベーカリー原料の小麦粉をはじめとしたほぼ全ての原料および高熱費等が値上げとなり、商品の値上げをしなくてはならなくなりました。そこで、価格を約10%アップに抑えつつ、サイズを3インチダウンして7インチピザで提案することとしました。お客さんの反応が不安でしたが、値ごろ感がお客様に受け入れられ、ヒット商品となりました。
さらに、お客様にお得感や驚きを提供する方法を考えました。完成したピザが会議室に運び込まれた際に、5段に重なっており、その様子を見て五重の塔をイメージ。北海道には五重の塔はありませんが、お客様にはインパクトがあると考え採用しました。
7インチピザは税抜1枚398円で販売しており、5段で税抜1,990円となりますが、お客様に価格面でのインパクトを感じていただきたく、税抜1,680円で販売したところ大ヒット商品となり、週末や際には爆発的に売れるようになりました。ベーカリーで単価1,680円の商品が爆発的に売れるということはこれまでなく、8月のお盆の際にも大ヒット、9月の大型リニューアル店舗でも大ヒット、そしてクリスマスには1日にホール換算で500枚を販売する店舗も出るほどでした。
五重の塔のピザの内容は、「マルゲリータ」「海老とブロッコリー」「ミックス」「テリたま」「ソーセージ&ベーコン」の5種類です。生地はナポリ風ピザ生地を店内で手伸ばしし、専用窯で焼成しています。全てトマトソースベースで、北海道産玉ねぎとコーンをトッピング。また、単品一番人気の「マルゲリータ」に使用するトマトは店内でも販売する地元産のミニトマトを使用。チーズは十勝産生乳100%のモッツアレラチーズ、そして風味の良い国産スイートバジルソースを使用しています。
5段重ねをするため、各段がしっかりと重なる容器を探しましたが見つからず、5段を重ねてイタリアをイメージした赤と緑のマスキングテープで固定しています。
以前より地元の道南原料での商品開発を目指してきましたが、北海道全体に視野を広げて、より美味しい商品、お客様が楽しくなる商品を提供していきたいです。
ピザの五重の塔
株式会社道南ラルズ
執行役員
商品部ゼネラルマネジャー
枝元 重頼
ヤマトは、1981年に創業し、漁港から魚を仕入れ行商することから始まりました。「南房総の高品質な魚介類をより多くのお客さまにお届けしたい」「美味しく魚を食べていただきたい」という想いから、地域密着の卸売事業をはじめ、小売事業、外食事業、観光事業を展開しています。
当社は観光事業の一環としてお土産センターを運営しており、そこで製造・販売している人気のパンと地元の名産品をコラボレーションして、さらにお客様に喜んでいただける商品を作りたいと考えました。
コンセプトは、ズバリ「地元千葉の名産品を□ぱんに封じ込める」です。名産品とのコラボの仕方も色々と考えました。例えば、パンに名産をトッピングしたり、粉末やペースト状にして生地に練り込んだりなどです。しかし、一番名産品を主張させることができるのは、名産品をできるだけそのままの風味と形で封じ込めることだと思いました。今回、最優秀賞を受賞した「□ぱん 千葉名産みそピーナッツ」以外にも、「桜エビと高秀牧場まきばの太陽チーズ」「房総岩の佃煮」「千葉県産ポークハムと高秀牧場まきばの太陽チーズ」「千葉県産ピーナッツの佃煮」「千葉県産濃厚ピーナッツクリーム」の5種類の千葉名産品とのコラボ商品を開発しました。どの商品も千葉県民に愛されているソウルフードをほぼそのまま生地と合わせました。
「□ぱん 千葉名産みそピーナッツ」に使用したみそピーナッツの選定にはかなり苦労しました。みそピーナッツだけでも数十種類あり、お土産屋さんによっては、そこでしか買えないみそピーナッツもたくさんあります。また、みそピーナッツを生地と合わせて焼成したときのピーナッツの固さや仕上がりもそれぞれ異なりました。試行錯誤した結果、みそピーナッツは、ピーナッツ粒が大きく味噌の風味を妨げない甘さのもので、パン生地に合わせるため粘度が高すぎないものを採用しました。
最も難しいのは、パンを焼き上げて割った時に、みそピーナッツがきれいに入るようにすることです。そのため、パン生地にみそピーナッツを置く場所や生地の巻き方、ねじり方などを幾通りも試しました。また、入れる量も重要で、パン生地に対し3分の1の量にすることで、きれいに入るようになりました。
焼き上がりのパンのみそピーナッツは、固くもなく、柔らかすぎもせず、パンと大変相性の良いものとなりました。
千葉には、まだまだ美味しいものがたくさんあります。特に海産物は豊富にありますが、パンとのコラボ商品はあまり見かけません。今後は、千葉名産品で日本中からお客様が買いに来るような商品を開発したいです。
□(しかく)ぱん 千葉名産みそピーナッツ
株式会社ヤマト
事業推進サポート本部 副本部長
プロダクト推進部 EC推進室
逆瀬 行仁
ウジエデリカは、宮城県で31店舗を展開するウジエスーパー店内で惣菜や寿司、ベーカリー商品の製造・販売を実施しています。また当社はウジエスーパー吉岡店をはじめ5 店舗で店内直営カフェの「U-cafe」の運営もしています。生鮮売場を充実させ、お客様に喜んでいただく為に始めたのが「U-cafe」です。完熟の果物を最も美味しい状態で味わってもらえるようスムージーという価値に変えて転用したのが始まりです。
その結果、今では食品ロスを削減しつつ、果物売場の充実をさせる事が出来るようになりました。ロスが減った結果、さらに価格へも転嫁出るようになり、よりお客様に喜んでいただける事が可能となりました。
今回、最優秀賞を受賞した「ぷるるん食感♪季節の葛(KUZU)バー」も、そんな取組から生まれた商品です。旬のフルーツに一手間加え見て楽しい、食べて美味しい、果物本来の美味しさをそのままに葛でコーティングした不思議食感のアイスバーにしました。もっちりとした食感を楽しめる半解凍でお召し上がりいただくのがおすすめです。季節毎に旬のフレーバーをお楽しみいただけます。調理ポイントとしては旬のフルーツの風味を知っていただくため、味を調整するための糖分や100%ジュースは必要最小限にとどめています。商品開発で苦労した点としては、凝固剤と各フルーツによって出来上がりの固さが異なるのですが、完成した時に各商品が同じ固さとなり、少し溶けても芯棒から落ちない固さを見つけるには、何十回も試作を繰り返しました。また当商品は“ 当たり付き棒” もありまして、さらに袋のシールを集めていただくと「U-cafe」商品と交換できるサービスも行っており、ワクワク感もありまして、食べて美味しい、集めて楽しい、大変ウレシイ商品となっています。
「U-cafe」については今はフルーツに留まらず、店内の生鮮品を活用した季節の海鮮丼やミックスフライ定食など季節や旬に温度価値も加えたウジエでしか食べられないランチ定食メニューも提供を開始しており、店内の生鮮素材を味わえる「究極の試食スペース」としての体験価値も提供させていただいております。
それらの取り組みはメディアでも多く取り上げられるようになり、お客様にも喜んでいただけるようになり、大変良い取り組みとなっています。
私はウジエデリカのベーカリーバイヤーも兼任していますので今後はパンのランチメニューや「U-cafe」商品とパンのコラボ商品なども開発してみたいです。
ぷるるん食感♪季節の葛(KUZU)バー
株式会社ウジエデリカ
Uカフェ吉岡店店長
兼 ベーカリーバイヤー
長根 麻利亜
ハーズは、埼玉県深谷市に店舗を構える地域密着型スーパーです。「こだわりを貫き、お客様にわかり易く伝える」店作づくりをモットーとし、日本一プロジェクト「日本一やさしく、日本一幸せに近い店」を目指しています。
当店の商品づくりの考えとしては、①美味しいこと②手づくり比率を上げること③とことんこだわることを基本としています。さらに、会社の取り組み事項である「自然派生活応援」というテーマに沿い“無添加商品”の開発にも取り組んでいます。
当社では毎週月曜日に「デリカの日」を実施しています。週に一度だけの「デリカの日」なので、お客様には“非日常”を味わっていただきたく、味・ボリューム・価格の三拍子揃った、お客様に満足していただける名物メニューの開発に取り組みました。
「デリカの日」はランチタイムのサービスとなるため、人気のカレーライスに着目。数年間のコロナ禍で、外出や外食を自粛していたお客様が多いことを考え、チキンカレーやビーフカレーではなく、より本格的なアジアンメニューであるグリーンカレーにチャレンジしました。
カレールーには、タイ産でスパイスの効いたペーストを使用しています。辛さの中に強い旨みと甘みがあるのが特長です。そのペーストと玉葱、鶏もも肉を炒め、ココナッツミルクで伸ばしていきます。このココナッツミルクもペースト同様、いくつも試した中からようやく見つけた逸品で、辛さをマイルドにし、コクと旨みを増幅してくれます。グリーンカレーが苦手な方も食べやすくなり、後を引くルーとなります。
当商品のもう一つの特長は、旬の野菜をたっぷりと使用している点です。冷凍野菜や水煮野菜などの加工野菜は一切使用せず、当店の青果売場で販売している旬の新鮮野菜のみを使用しています。使用野菜は日により若干異なりますが、10種類以上かつ200g以上を使用するようにしています。また、野菜は素早く素揚げすることで、色味が鮮やかになり、野菜の甘みも引き出されます。なお、付け合わせのピクルスも自家製ピクルスです。
本格的な味わい・総重量600g・税抜500円と、味・ボリューム・価格の三拍子が揃い、お客様からの支持が高いのはもちろん、女性従業員からの支持も高いです。
店内でカレールーを作るところから始め、野菜のカットまで全て手作業で実施しています。かなり手間がかかる商品ですが、現在、他の従業員でも作れるようにオペレーションの指導を実施しています。
当社では月に2回、研究開発日を決めており、アイディア共有や試作品の製造に取り組んでいます。今後は地元深谷市の食材を活かした名物商品を開発したいです。
本格辛口グリーンカレー
株式会社ハーズ
惣菜部部門長 店長補佐
芳本 純也
エムワイは1992年に創業し、湘南エリアの藤沢市で韓国料理店2店舗、焼肉店、カフェ、精肉店など、計5店舗を展開しています。
当社では、地域食材を使用することで、“食”から藤沢市の魅力を発信しています。また、SDGsの観点からも行き場を失った食材の使用や地元生産者と共に地産地消を目指すことをテーマとしています。
藤沢では、シラスがメディアなどで有名となりましたが、近年は以前ほど獲れなくなってしまいました。一方、藤沢市には多くの農業従事者や畜産業従事者の方々がいます。また、持続可能な農業や畜産業を実施している生産者も多くいます。中でも、当社が応援している「ふじさわ軍鶏」は、藤沢市内の桃畑で育てられており、エサには地元の果樹園の果物(梨やキウイ、いちご)などを氷蔵庫で年間保存したものも与えています。また、地域のフードロス食品や藤沢市から非常時用備蓄品(ビスケットや粉ミルク)を譲り受け、粉砕して餌に混ぜており、軍鶏の飼育がフードロス削減にも貢献しています。
その他、夫婦二人三脚で餌にこだわって育て、規格外となってしまった卵や、鎌倉の腰越漁港で揚がるカタクチイワシを一年間塩漬けにして作った魚醤などもあります。
これらの食材で何ができるのか試行錯誤し、湘南の気候やイメージ、近年のトレンドなどなどから「ガパオライス」にチャレンジすることにしました。
「ふじさわ軍鶏」は、ほど良い噛みごたえと歯切れのよさを持つ肉質で、上品な味わいのジューシーさが特長で、地元を中心に人気が高まりつつあるブランド軍鶏肉です。ただし、生産量は多くはなく、中食で簡単に提供できるほど安くはありません。そこで、価格の高いもも肉と比較的安価なむね肉をミンチにすることで、中食でも提供できる価格になりました。
また、通常ガパオにはナンプラーを使用しますが、ナンプラーの代わりに魚醤を使用することで、より味わい深くなりました。
その他、玉ねぎやズッキーニ、パプリカなど、可能な限り地場物で作ることを心がけています。
近年、地産地消というフレーズをよく耳にしますが、食材選びから持続可能かどうかを判断することの難しさ、そしてその先にある需要と供給のバランスの大切さを改めて勉強しました。
今後は、さらに湘南藤沢の生産者の方々と交流を図り、駅弁やお惣菜、ふるさと納税返礼品などを通して、“湘南藤沢名物”と言われるような商品を開発していきたいです。
湘南ガパオライス
株式会社エムワイ
代表取締役
𠮷田 亘良